日本の穀物価格は原発により高騰

新興市場は、引き続き、手掛かり材料に乏しいものの、主力株を中心に底堅い展開となりそうだ。昨日は日経平均が小幅安に留まったのに対し、マザーズ指数は約2%の上昇となるなど、個人投資家の中小型株に対する物色意欲の強さが支援材料となるだろう。

日本の穀物価格は原発により高騰する

東日本大震災後、米国の穀物先物市場では、日本の食料品輸出入に大きな変動が起きると考えた。

 

震災の影響で日本は、@トウモロコシの輸入を激減させ、Aコメを大量輸入し、B食肉の輸入は増加させると予測した。しかし、これらの予測は結果的に当たらなかった。まずトウモロコシについては、3・11後、シカゴ商品先物取引所のトウモロコシ先物(期近)が、日本の輸入減少の予想を先取りする形で大きく下げた。しかしその後、韓国は価格が急落した絶好のタイミングで買い付けに出て、3月16日に1ブッシェル=6.165ドルで底を打ち上昇に転じた。翌週の1週間では1ブッシェル=7.00ドルごまで回復し、結局4月日に7・76ドルで取引を終了し、2008年6月27日につけた史上最高値1ブッシェル=7.5475ドルを連日更新した。

 

トウモロコシ価格が回復し、最高値をつけた背景には、震災による日本の穀物の輸入・加工設備の被害は限定的で、穀物輸入に大きな影響はないと判断したからである。というのも、製粉工場や大豆や菜種の搾油工場のほとんどが、茨城県鹿嶋市以南・以西に位置しているからである。

 

一方、配合飼料工場は、青森県八戸市、岩手県釜石市、宮城県石巻市、茨城県鹿嶋市の4拠点が損害を受けた。ただ、日本の配合飼料生産は合計2480万トン(10年度)で、津波に襲われた青森県から千葉県までの太平洋側の6県の生産量は778万トンつまり被害は全体の3分の1以下(31.4%)に過ぎない。しかも、飼料コンビナートは鹿嶋市で被害を受けたが、震災から4日後に生産を再開。八戸市の工場は、海水に浸かったが深刻な損害はなかったため短期間で復旧するとみられている。

 

釜石市と石巻市の配合飼料工場は大きな被害を受けたが、両地区の生産量は年間200万トンであり、この影響も限定的だ。たとえ完全復旧までに6ヵ月を要したとしても、その間必要なトウモロコシは、配合飼料原料の50%のため、半年でせいぜい50万トンと予想されるからである

 

震災前から高騰していたトウモロコシ

そもそも、トウモロコシの価格は東日本大震災の前から上かっており、震災後も、その構造的な要因に大きな変化はない。まず、原油価格の高騰で米国のガソリン価格が上昇した結果、トウモロコシを原料とするバイオエタノールの需要が米国で急回復しているのである。米国ではバイオエタノールの製造業者には1可当たりO・45ごの連邦税が免除されており、これが事実上、補助金と同じ効果を持ち、製造業者が増産するインセンティブとなっている。

次に、中国を筆頭とする新興国の輸入増大がある。中国は、昨年のトウモロコシ輸入量は1年間で157万トンだったのに対し、今年の3月にを買い付けた。中国にとって15年ぶりの大量輸入であった。中国の検疫局の担当者は、南米アルゼンチンへ飛んで同国政府とトウモロコシ輸入について交渉をしているという。同国はトウモロコシの輸出量世界第2位で、現地の報道では、今年中旬には中国へ向けて最大200万トンのトウモロコシを輸出する予定だという。このようなトウモロコシの急激な輸入拡大は、他の新興国でも起きる可能性がある。

最後に、米国で金融緩和政策の継続がある。フェデラルファンド(FF)レートはリーマン・ショック後の08年12月から実質0〜0.25%に据え置かれている。このため投機筋
の資金借り入れが容易に、投機マネーがトウモロコシ先流人しやすい市場環境になってのである。新興国の需要増や冬投機ネーによる国際相場の高騰は、粉でも起きており、日本の製粉は6月末にも業務用小麦粉の出格を10%強引き上げる方針だ。ずれにせよ、投機筋の出した結

「震災後も供給逼迫に変化はなということである。赤信号の点ているトウモロコシの在庫率にても、バイオエタノール向け需増えて、さらに低下する可能性り、「価格局騰は続く」という結論に至ったと推測される。

震災後、日本がコメを緊急輸入するのではないか、という国際市場の予測も裏切られた。国内ではコメが余っている状況が続いているからだ。さらに、被災した東北5県のコメの生産量は合計180万トンで日本の生産の約5分の1に当たるが、津波の被害を受けるような海岸沿いの低地にある水田は、そのうちの10%程度で、被害は限定的と考えられる。さらに、政府保有の備蓄米に加え、民間の在庫もあることから、日本全体では200万トン近いコメを備蓄している。これに加え、一定量の輸入を国際的に義務付けられているミニマムアクセス米、77万トン分を外国から買い付けなければならない。このことから今年もコメの供給過剰は続くはずである。

汚染水の海洋投棄で海上運賃は高騰する

穀物などを海外から輸入する日本の商社にとって、実は頭の痛い問題がある。墓只電力福島第1原子刀発電所の事故の影響で周辺の海水が放射能で汚染され、その結果、海上運賃が引き上げられるリスクが浮上しているからである。穀物などを運ぶ大型船は、エンジンを冷却するのに海水を使って冷却系統を循環させる。

 

また、荷役作業が終わった後に空になった船のバランスを安定させるためのバラスト水として海水を利用する。これらの冷却水やバラスト水が放射能で汚染されていることを懸念し、日本への寄港を嫌っている船主や船員が多いという。

 

しかも、仮に放射能に汚染された海水をバラスト水として取り込めば、放射能に汚染された船となり、船の資産価値は下落、将来の転売も不可能になりかねない。また、穀物を輸入する商社は、福島第1原発から遠く離れた港での受け入れを求められることで余計な物流コストが発生したり、日本へ寄港してもらうために割増運賃を払わなければならなくなる可能性がある。こうした懸念が海運業者に根強くある。

 

こうした海上運賃の値上がりはトウモロコシの価格をさらに押し上げ、これが玉突きで配合飼料の価格に跳ね返り、豚肉や鶏肉や卵の価格に転嫁されていく。トウモロコシそのものの高騰と海上運賃の割増で、最終的に消費者の財布は二重に圧迫されるという構図が生まれる。

 

こうした影響を考えると、東京電力の責任は重い。放射能に汚染された水の海洋投棄は天災ではなく人災である。汚染水の海洋投棄は「悪質な環境破壊行為」として世界中から非難されており、日本の国際的信用は地に落ちた。東京電力や日本政府は、公海だからこそ環境破壊行為をしてはならないという常識をわきまえておくべきだった。